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2018/09/13 マッチングアプリ

マッチングアプリが40才独身社長の心の隙間を埋める…?(東カレデート編後編)

 

40歳独身、IT企業社長。誰もが羨む経歴を持つ彼がマッチングアプリを使う理由とは…?
彼の隠された闇を暴いていくストーリー。
今回は東カレデートで出会ったBとの物語。彼が抱える闇とは一体…?

>>前編はこちら

 

22歳で声優志望の「B」と私は、六本木のフレンチレストランで会った。

 

「東カレデート」では美人ではあるものの地味な印象だったBは、実物もたいして変わらなかった。

 

でも声を聞くとその印象は別物に変わった。

落ち着き、澄んだ深みを帯び、存在感がありながらも抑制されている。

声優志望として日々「声」を磨いているのがはっきりと分かる美しい声質だ。

 

ドリンクを注文しようとすると、彼女が選んだのは「水」だった。

注文

 

「水?」

「はい」

「お酒は飲めないの?」

「いえ…そういうわけではないのですが…」

 

彼女は言いづらそうにうつむいている。

 

 

「そっか。何か理由があるなら無理して飲まなくてもいい。アルコールの場が嫌なら私も水にしよう」

「いえ! 気にしないでください! 私が…あの…ちょっと…」

 

彼女は怯えた小動物のように戸惑っている。

 

「そんなに怯えなくていいよ。私は君の命をつけ狙うスナイパーじゃないんだから」

 

さすがに相手がこう萎縮してしまっては、私が率先して場を温めなければいけない。

 

「ありがとうございます。…私…あんまりこういうの慣れてなくて…」

 

「こういうの」とは男性経験のことだろう。

それが事実ということは彼女の様子を見れば一目で分かる。

 

「もし気分が乗らないようなら日を改めてもいい。どうしようか?」

「いえ!大丈夫です!…これだから私…ダメなんです…自分で分かってるんです」

 

怯えながらも、その目の奥には芯のある決意が感じられる。この子なりに今日は思うところがあって、ここに来たのだろう。

 

「分かった。じゃあ私はワインを頼むことにするよ。お酒を飲みたくなったらまた注文しよう」

「ありがとうございます」

 

こうして私たちの「お食事会」は始まった。

 

君のような心を私は欲している

しばらくの間、つまらない話を私が一方的にしていた。

彼女は視線をどこに合わせたらいいのか迷うほど怯えている。

 

私は出会うきっかけとなった「声優」の話題を早々に切り出すことにした。

 

「相当厳しい業界っていうのは知ってるけど、実際はどうなの?いずれ食べていけそうかな?」

 

魚の白身を食べていた彼女は、突然その手を止めた。

そしてしばらくその白身を見つめていた。

 

「…多分無理だと思います。今のままなら…」

落ち込む彼女

 

彼女はナイフとフォークを置き、私に視線を向け言った。

 

「今のままっていうと?」

「レッスンで技術を磨いて、オーディションを受ける…それだけでは多分無理なんです。今の私に必要なのはきっとそういうことではないんです」

 

今の私に必要なこと…。

私は鈍い痛みを感じながら彼女の次の言葉を待った。

 

「声優も一種のタレントです。プロともなれば演技ができるのは当然で、それ以上のことが必要になります」

「つまり人との繋がりってことかな?」

「そのとおりです。私、それが苦手で…。気が弱いんです。臆病で、まともにコミュケーションがとれないんです。

今の私には人との繋がりが何よりも大事なのに…」

 

深みのある声を絞るように彼女は言った。かなり切迫しているのだろう。

 

「声の演技には自信があります。私がお酒を飲まないのも…喉への負担を少なくするためです。

声を磨くためなら私は何だってやります。

…でもそれ以外のことが何もできなくて…そんな私を見かねた事務所の社長がマッチングアプリにでも登録して、自分を試してみろ、と…」

 

 

なるほど。そういうことか。どおりで写真に覇気がないわけだ。

 

 

「どんなに技術を磨いても、オーディションでは気が引けて力が出せず落ちてしまいます。役をもらえてもモブキャラばかりです」

 

モブキャラが何なのか分からなかったが、多分名もなきキャラクターのことだろう。

 

彼女を励ますつもりではなく私は率直に言った。

 

「今日食事をする相手が君でよかった」

 

彼女は聞いたことがない言語を耳にしたような表情をした。

 

「君ともっと会話がしたいな。とても興味がある」

「私に?どうしてですか?」

 

「君のような心を私は欲しているからだよ」

男

 

 

「心?私は空っぽです。お金も立場もなく、夢しか持っていません」

「それがいいんだ」

「…全然よくないです。…私…もうあきらめようかと思ってるんです…

私みたいな中途半端な人間はきっと生き残れませんから…」

 

私は本当に彼女に連絡してよかったと思っていた。

本人に自覚はないだろうが、私にとって彼女の心は充分に眩しい。

 

「夢というのは毒にもなる劇薬だ。だから夢を追い続けてと無責任に言うつもりはない。

ただイメージしてみよう、あきらめた自分を。その先の自分を」

 

彼女は黙って私の言葉を聞いていた。

 

「何を成し遂げたかは、ずっとずっと先に振り返るべきこと。問題は何を成し遂げたいかだ。

今の君は見るべきポイントがずれていると思うな。君は今、成し遂げられるかどうかの未来予知をして不安になっているにすぎない」

 

なんだか偉そうなことを言ってしまい少し後悔したが、このままでは私も今夜何も得ることがない。

早めに雰囲気を変えるべきだと私の直観が告げていた。

 

彼女は私の台詞をゆっくりと噛みしめているようだった。そして、静かに、でも今までより潤いのある声で言った。

 

「…あの…少しお酒をいただいてもいいですか?」

 

私は黙って頷いた。

 

その後彼女は私の倍のスピードでグラスを空にしていった。どう見ても少しのお酒とは言えない量だった。

 

元々は酒を好んで飲むのだろう。普段はストイックにコントロールしているのだ。

 

声優の話題に触れることはもうなかった。

 

私たちはマッチングアプリのことや、私が所有している島に生息する野生動物の話題で大いに盛り上がった。

 

社長としての実務や年収のことも彼女は私に尋ねた。彼女が色眼鏡で見ていないので私はジョークを交えながら正直に答えた。

 

私が素直に話すと、彼女もまた素直に感嘆していた。

 

そうして夜も更けていき、充実した時間を過ごした私たちは店を出た。

 

頑張らないでね

 

タクシーを呼ぼうとすると彼女は電車で帰りますと言った。

私は都営大江戸線の六本木駅の改札まで彼女を見送ることにした。

その間、私たちは些細な話題、でも充分に価値があるコミュケーションをとっていた。

 

改札前にたどり着くと食事の礼を言い、彼女は改札を通った。

 

 

もちろん連絡先は交換せず、再会の約束もしていない。

 

彼女が恋愛に気が向いていないのは私にとっても好都合だった。

 

改札の向こうで彼女は振り返った。そして日々の鍛錬を見事に反映した響く声で言った。

別れ

「明日オーディションなんです」

「頑張らないでね」

と私はたいした響きもない声で言った。

 

彼女はその夜、一番素敵な笑顔をし、地球の裏側にでも続いているような深い六本木の地下に潜っていった。

 

夜の六本木は大勢の外国人が往来し異国にも思えたが、その雑多な雰囲気は不思議と居心地がよかった。

 

今の私には人との繋がりが何より大事。

 

彼女だけではない。こうして今六本木にいる全員も人との繋がりを求めているのだ。

 

いつの日か、アニメのエンドロールで彼女の名前を見つけることができるだろうか?

その前にアニメを見ることから始めなければいけないな。

 

もう少し飲みたい気分だった私は、軽い足取りで行きつけのバーへ向かった。

 

 

次回。次のマッチングアプリで衝撃の出会いが社長を襲う…

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