2016/07/12
【連載ドラマ】負けられない女たちの21時

【連載ドラマ:1話】21時から始まる、女たちの仁義なき戦い

カミングアウトトーキョー 公式ライター
鶴野真紀
年齢:28歳
大学:慶應義塾大学 経済学部
住居:六本木
職業:外資コンサル
年収:850万


大手出版社勤務28歳(年収800万)
慶應義塾大学経済学部卒 麗華の場合

 

一般的に高学歴・高収入が評価される男性社会とは裏腹に、一生の中で評価基準が幾度も変わる女性の人生は複雑だ。

とりわけ女性同士の格付け、所謂「マウンティング」は、男性からの評価の目よりもずっと厳しい。
高校時代には彼氏が絶えないこと、大学時代にはそれなりに名の知れた大学に進学し人気企業から内定をもらうこと。

そして、社会人新人時代には早々に将来性のある男性からプロポーズを受け、30歳前にFacebookで可愛い子供の写真を披露することが彼女たちの勝ち組の証だ。

その後も、旦那の年収、自宅の所在地、料理の上手さ、子供の進学先等々で無意識のうちに格付けをしてしまうのは女の性なのだろうか。

 

麗華は私立中高一貫の女子校を経て、慶應義塾大学経済学部を卒業後、新卒で都内大手出版社に入社。

昨年からは、かねてから希望していた美容雑誌の編集部に異動となり、女性の憧れるキャリアを順調に歩んでいる。

仕事柄、原稿締め切り前には徹夜が続き、赤文字系のキラキラ女子大生だった頃ほどは服装に構う余裕がなくなってきたものの、街ですれ違う男性が皆振り向く程の華やかさは今も健在だ。

金曜の夜、今日も取材が終わり、買ったばかりのFendiのトロワジュールを抱えていつものようにタクシーに駆け込む。

ニューヨークのタクシー

里香「それでさぁ、麗華は彼氏といつ結婚するの?もう色々選んでいる暇ないよ、28歳なんだし。この前、うちに旦那の職場同期の数人が来て恋愛談義になったんだけどね、やっぱり結婚考えるのには女は20代がマストだってさ。商社マンは女の子選びたい放題だからってキツいよね~」

21時30分、Aman Tokyoのラウンジバーでギムレットを飲みながら、里香がいつもの調子で悪びれもなく言う言葉が麗華の胸をチクリと刺す。

里香は中学時代からの親友で、小動物系のかわいらしい子だ。

麗華ほど目立つ華やかさはないものの、男性の思い描く「自慢したい可愛い新妻」タイプである。都内の女子大在学中にインカレテニスサークルで知り合った2つ上の東大卒総合商社勤務のエリートと26歳の時にめでたくゴールイン。

その後間もなく旦那の転勤に連れ添ってダラスに移り住み、ちょうど1ヶ月前に帰国したばかりだ。

里香は元来明るくて性格が良い子なのだが、これまであらゆる点で麗華に及ばなかったからなのか、子なし専業主婦の暇つぶしなのか、多忙な麗華に会いたがっては何かと上から目線で恋愛の指南をしてくることだけが、最近麗華にとっては正直なところ鬱陶しい。

里香の一通りのアドバイスが終わるまで、聞いているふうに所々相づちを打ちながら、丸の内の夜景をぼんやりと見つめ、Amanのロゴ入りチョコレートを頬張る。

 

『転職してどうだった?気になる憧れのお仕事の実態』『働く女子のお買い物リスト』『副業のススメ』・・・

 

仕事に就いてから、働く女性のための特集ページを幾度となく企画してきた。
女性の多様なライフスタイルが受け入れられるようになったものの、生物学的な「オンナ」としての本音とそれはまた別の話だ。

キャリアも価値観も違う里香を意識してはいけないと思いつつも、負けず嫌いな麗華には里香の言葉がどうしても勘に触る時がある。

 

マンションの扉を開けベッドに倒れ込んだ途端、どっと疲れが出ると同時にホッとした。一切の煩わしさから解放され、一人の時間を思いっきり堪能できる至福の時だ。
 

そういえば、いつか会社の美人な先輩が言っていた。

 

「先に結婚した友人に早く結婚すればとか、いい人紹介してあげようか、とかお節介なこと言われて腹が立ったら『大丈夫、私は貴女より美人だから』」って思うようにしているの」
 

 

麗華「(・・・大丈夫、私は賢くて美人なんだから)」

間接照明の優しい光の中で、里香の台詞を頭から振り払うように唱えた。

 

明日は以前仕事でお世話になった広告代理店のお客さんと久々に近況報告会という名のデートに誘われている。

初めは仕事上の関係をプライベートに持ち込むことも初めは大して乗り気ではなかったものの、里香と話しているうちに「優良物件」とのデートは行っておいて損はないかもしれないとも思えてきた。

いつでも芯を持って強くありたいと思う反面、友人のちょっとした言葉に刺激されてしまう自分がなさけない。

明日はそれなりのデートプランを用意してくれていることだろうとほんの少しの期待を抱きながら入念に洗顔した後、美容液を塗り、サプリメントを飲む。

 

ラインの連絡

 

ピコピコッ♪

その時LINEが鳴る。

明日の待ち合わせの連絡だろうかとiPhoneを見ると、そこには元彼の名前があった。