かつては新聞やテレビが主な情報源となっていた日本。時代の変化とともにインターネットが普及し、ネット媒体によってさらに情報で溢れかえっている。
それは芸能人のゴシップや政治家のスキャンダルを好み発信する”週刊誌”も同じだ。”文春砲”という言葉を聞いたことのある人も多いはず。紙媒体の彼らも「文春オンライン」や「フライデーデジタル」「ニュースポストセブン」などのネット媒体をもち、瞬発力を増した。
今回は歴15年以上の現役週刊誌記者にスクープの裏側について取材してきた。

週刊誌記者S
25歳で編集プロダクションに所属したのをきっかけに週刊誌記者デビューし、15年以上のキャリアを持つ。政治家から芸能人までのゴシップを担当。ハマっているものは韓流ドラマと筋トレ。
一般人が知らない、週刊誌業界のあるある「洗礼」とは
ーー週刊誌業界って血気盛んなイメージがありますね。
記者S:僕の業界に入って初めての張込みの話なのですが、東京で雪が降った日に有名な某ジャニーズの家の前で16時間立ち張りさせられました(笑)
ーー初日から16時間(笑)やめたくなりません?
記者S:なんか、初めての張り込みだったからこれが普通なのかなって思ってた(笑)たしか、ジャニーズの隠し子がいるみたいな話だったはずですが、16時間張り込みを2~3日やりましたね。
ーーひとりでですか?
記者S:その時はひとりで張り込んでて、たまにコンビニとか行ってご飯買ったりトイレ行ったりしたけど、本当に目が離せない現場は、ペットボトルでしょんべんとかしてたな。さすがに今はもうないですけどね!
ーー過酷な現場なんですね…
記者S:ある出版社では洗礼として、新人の社員が編集部に配属されたら、カメラマンがそいつの仕事帰りを張り込みして写真を撮るんですよね(笑)
新人社員に付き合っている人がいたり、もし不倫なんかしてたら証拠写真撮って翌日そいつの机の上に置かれてたな…。これはあるあるでしたね。
ーーなんでですか(笑)
記者S:みんな面白がって新人の洗礼としてやってたな。カメラマンさんからしたら「社員のお前らは高学歴かもしれないけどなめんなよ」って感じだったのかもね。
女優のフェラ写真が撮れた時はさすがに…
ーー芸能スキャンダルの裏側ってありますか
記者S:数年前ある女優と人気男性歌手が付き合っているという話があって、張り込みしたときにまさかのその女優が車内でフェラをしている写真が撮れて(笑)
ーーフェラ写真はさすがに(笑)
記者S:事務所に当てたんですけど、さすがに写真を出せるわけもないので、ヤラセで車内でキスをしている写真を撮って代わりにその写真を出したことはあります。
ーーそうなんですね!
記者S:あとは出版社と事務所の付き合い柄、記事が出せないこともありますよ。例えば、「来月写真集を出す予定だから…」とか「来週号の表紙予定なので」と言った理由で記事化できないこともしばしば。
ーー記事はなくなるんですか?
記者S:いや、その際は別の媒体にネタを渡したりします。男性誌や女性誌によっても適するネタは違いますし、記者同士で情報交換することはよくありますよ。
ーー週刊誌からは逃げられないのですね…こわい
記者S:あはは(笑)僕らも徹底的に取材しますからね。特に不倫や薬関係なんかの記事は名誉毀損で訴えられやすい。何日も張り込みしてホテルや自宅の出入りの写真を撮ったり、確実な証拠を用意してから記事化します。
ーー訴えられることないんですか?
記者S:ありますよ。僕も訴えられたことはありますし、先輩もほぼ訴えられているんじゃないかな。出版社相手に訴えてくることもあれば、記者名義で訴えられることもありますね。
最近は芸能人の方も、個人SNSなどで反論できる場を持っているので時代の変化を感じますね。
週刊誌でしか報道できない「母の頭を切って鞄に入れた少年」事件
ーー1番記憶に残っている取材は?
記者S:僕が新人の頃だから15年くらい前に起きた事件取材ですね。
ーー事件取材も担当するんですか?
記者S:基本的にジャンル関係なく取材していますね。事件から芸能、政治、経済、健康もの、アダルトまで。
ーー本当に幅広いですね。なぜその事件が記憶に残っているんですか。
記者S:福島県の有名な進学校に通う高校生が、母親を殺害後、頭部を切って鞄に入れて漫喫に行って一夜を過ごし自供しに行く事件なんですが、稀にみる惨さだからですね。新人だったので尚更印象に残っています。
ーーこわい…
記者S:それから、事件取材でいろんな現場に行ったけど「ここはやばい」って、まがまがしい雰囲気を感じたのは最初で最後でした。
ーーその事件知らなかったです。
記者S:当時の犯人が未成年だったから報道規制がひかれたんですよ。1週間ほどでピタリとマスコミが報じなくなりました。
ーー週刊誌も?
記者S:ええ。未成年相手ですからもちろん顔や実名は出しませんが、テレビや新聞と違ってエグい部分まで書けるんです。具体的な殺害方法とか放送できない内容まで深掘り取材できるのは、週刊誌の強みかもしれませんね。
スクープの数だけ稼げるが…
ーー直撃取材もするんですか
記者S:いやー僕も昔は本当に直撃要員だったからなぁ...
ーー直撃要員?(笑)
記者S:そうそう。直撃取材は若手が行くことが多いかな。これは記者によるんだけど、あえて取材対象を怒らせて、怒っている写真を撮ることもありますよ(笑)基本的には慎重に、そして丁寧に、相手に寄り添って刺激しないようにをモットーにしていますけどね。相手も人間なので、そこはやはり丁寧に対応しないといけないです。
ーー直撃失敗することも?
記者S:ありますよ。基本的に何も話さなくても、直撃取材に行ったことは文中で書けるんですが、取材対象者が子どもと出てきた場合などは直撃に行かないです。
ーーなるほど
記者S:まぁ、内容にもよるんですけどね。特に不倫関係などセンシティブな内容のときは難しいですよね。
ーーそうですね。ぶっちゃけ給料ってスクープ出せば上がりますか?
記者S:僕が前にいた雑誌はスクープ賞っていうのがあって、スクープを出せば30~40万追加で出ていましたね。正直、雑誌によって全然違うんですが今はスクープ出してもそこまで貰えないと思いますよ。
ーーそうなんですか?
記者S:後輩の子はスクープ料は1万円だったと言ってましたし(笑)
ーー少ない(笑)
記者S:年々、週刊誌業界も財政が厳しくなっていますからね…。それでもやはり記事を出す分だけ給料は上がりますね。
ーーやりがいはありますね。
記者S:そうなんです。給料はもちろんなんですが、自分の記事がきっかけでワイドショーに取り上げられたり世間が少しだけ動いたりしているのは見たいですね。なんやかんやで、それを見ている人は多くいますし。
最後に
時代が変わっても、常にマスコミの中でも異彩を放つ”週刊誌”。コンプライアンスが厳しくなっている現代社会でも、情報を欲する人たちがいる限り彼らは記事を書き続けるだろう。
しかし彼が言うように、週刊誌でさえNGネタや忖度ネタは必ずある。ネットを含め情報で溢れかえっている世の中で情報の取捨選択を自分で見極めることが大切だ。






