皆さんは「エモい」という言葉の意味を知っていますか?
最近SNSやテレビなどでも良く聞く言葉ではありますし、若者の間で流行っている言葉であることはなんとなく知っているものの、一体どんな意味で、どんな時に使うのかは知らない、という人も多いのではないでしょうか。
また日常的に「エモい」とは言いながら、正確な意味を聞かれると「今更よく知らないとは言えない…」などと思ったりして。
よく調べてみると「エモい」という言葉には特定の明確な意味はないのに、様々な意味を含めている非常に奥が深い言葉であるということがわかります。
今回はそんな「エモい」という言葉の意味や語源、使い方について詳しく解説していきます!
「エモい」ってよく使う?
カミングアウト東京が実施したアンケートで100人の男女に「エモい」という言葉を使うかどうかを調査したところ、「普段から使う」と答えたのは全体の14%、「使わないけど聞いたことはある」という人は71%、「そんな言葉は知らない」と答えた人は15%という結果が出ています。
(20代〜50代の男女が回答)
また年齢別では「使う」と答えたのは20代~30代の男女のみで、年齢を重ねるごとに「使わない」「知らない」と答える割合が増えていることが分かりました。
さらに「使わないけど聞いたことがある」と答えた人の割合が一番高いことから、「エモい」という言葉は意外と多くの人が耳にしている言葉であることがわかります。
「エモい」ってどういう意味?
まずは「エモい」という言葉を深く理解するために、「エモい」という言葉の意味や語源について詳しくご説明しましょう。普段なんとなく「エモい」と使っていた人も、意味を知ればもっと使いこなせるようになるかもしれませんね。
「エモい」の意味は?
「エモい」という言葉を簡単に表現するならば、「見たり聞いたりしたことで、言葉ではうまく表現はできないけれど激しく心が揺さぶられている様子」であるといえます。
「エモい」が特定の意味を持つというよりは、感動や感傷を表す様々な形容詞のどれとも言えないけれど、そのどれもを含んだ良質な心の動きに形容詞の「い」を付けたものを「エモい」と表現することが多いようです。
「エモい」の語源は?
「エモい」という言葉の語源は、大きく分けて2つあります。
1つ目は、1980年代のアメリカで流行したロックミュージックのジャンルである「Emo(エモ・イーモウ)」と呼ばれるエモーショナル・ハードコアから派生した言葉であると言われています。この「Emo」自体も語源はemotional(感傷的・情緒的)という英単語を略したものです。
Emoは激情的で感動的な歌詞と曲調で、日本の音楽シーンにも大きな影響を与えました。音楽業界ではEmoの音楽を「エモい」という言葉で表現し、それが音楽に限らず日常生活でも、激情的・感動的なものを表すときに使用されるようになったといわれています
2つ目は、日本語の「えもいわれぬ」という言葉から派生したといわれているもの。えもいわれぬ、というのは「なんとも形容しがたい」という意味があり、「エモい」と同じくうまく言葉にできない感情を表す言葉として古くから使われています。
語感や意味が似ていることからも、「えもいわれぬ」が「エモい」に繫がったといわれることも。
「エモい」はいつから、なぜ広がったの?
「エモい」は2016年に三省堂が開催する「今年の単語2016」の第2位に選ばれたことから話題となり、10代~20代の若者を中心としてSNSなどで広まったと言われています。
また同時期に若者の間でリアルタイムに動向を表現できるInstagramのストーリー機能が開始されたこともあり、若者たちが感情を表現するツールが増えたことからより「エモい」という言葉が広まった可能性もあります。
「エモい」の類義語
「エモい」の類義語はノスタルジック、懐かしい、感傷的、もの悲しい、しみじみなど。英語で言えば「sentimental(感傷的な)」、「nostalgic(郷愁)」などが挙げられます。どれも感情の動きを表現する単語ですが、それらを総括した言葉が「エモい」であると考えられます。
エモいってどんなときに使う?
「エモい」という言葉の意味はなんとなくご理解いただけたでしょうか?では次に、「エモい」を使うのはどんな時なのかということについて考えてみましょう。
激しく感動した時
美しい景色を見たり、素敵な映画を観たりして、激しく感動をおぼえたときに「エモい」という言葉を使ってその気持ちを表現します。
心の動きをただ感動したと伝えるのではなく、感動の最高バージョン、という感じですね。
複雑な気持ちが入り混じっている時
苦しい恋で切なくなったり、それでも好きだという恋心が自分の思いと裏腹にうねるように盛り上がっていたり、そんな複雑な気持ちを「エモい」と表現することがあります。
辛いのに楽しい、悲しいのに燃える、そんな気持ちの動きを表現する言葉って他にあまり思いつきませんよね。また、理由もなく胸がぎゅっと苦しくなるような切ない瞬間もエモいと表現されることも。
懐かしさに浸っている時
子供の頃に育った街を再訪した時や、昔よく遊んだ幼馴染に数年ぶりに会った時、また昭和レトロな街並みを歩いている時など、懐かしいものを見た時にも「エモい」を使うことがあります。
夕暮れ時にどこからか香った玉ねぎを炒める匂い、「もうご飯だから帰ってきなさいよ」という母親の声、おばあちゃんが頭を撫でてくれた温かい手の感触など、何も不安なことなどなかった子供の頃を思い出し、ノスタルジックさに胸がジーンとする気持ちって、誰にでもあるはず。
そんな懐かしさが「エモい」という言葉で表現されるのです。
悲しい気持ちになった時
辛い別れを経験したり、悲しい映画を観たり失恋ソング聴いたりして悲しい気持ちになったり、涙を流さずにはいられなかったりする時も「エモい」という言葉で表現するときがあります。
ただ悲しいときならば「ぴえん」で済まされるところが、もっと深くて切ない、大きな感情の波を感じられる時に「エモい」と表現されます。
賞賛したい時
友情や愛情、人を圧倒させるような芸術作品など何か素晴らしいと感じるものに触れたときにも「エモい」を使うことがあります。
何かあるたびに「ヤバい」と表現する若者言葉もありますが、「エモい」はそれよりももっと良質で感動的なイメージで使われることが多いようです。
例文付き「エモい」の使い方
ではここから、具体的な「エモい」の使い方を例文と要約付きでご紹介します。
例:「〇〇の新曲めっちゃエモくない?」
意味:「〇〇の新曲、めっちゃ名曲じゃない?」
例:「友達の失恋話を聞いてたら自分のことみたいでエモくなった」
意味:「友達の失恋話を聞いてたら、自分が失恋したときのことと重ねてしまって何とも言えない気持ちになった」
例:「片付けしてたら中学校の時の写真出て来てエモかった」
意味:「片付けしてたら中学校の時の写真出て来て懐かしい気持ちになった」
例:「あの映画のラストシーンエモくて泣いた」
意味:「あの映画のラストシーンが悲しくて泣いた」
例:「私たちもう10年もずっと友達ってエモいよね」
意味:「私たち10年もずっと友達ってすごいよね」
このように、「エモい」は色々な感情表現を含めたある意味万能な単語としてよく使われています。
代表的な「エモい」ものを紹介!
色々な感情を表すことのできる「エモい」ですが、多くの若者たちが「エモい」と感じている代表的なものは一体どのようなものなのかを厳選してご紹介しましょう。
音楽
エモい音楽の代表としてよく挙げられるのは、失恋ソングや青春を思い出させてくれるような歌詞の曲です。
失恋ソングではOfficial髭男dismの「Pretender」の歌詞がエモいと非常に人気を集めています。
運命の人でありたかったのに決して叶わない恋の相手。2人で紡ぐことのできない未来を自分が一番理解していながらずっとそばにいたけれど、そんな恋はいつかは必ず終わりを迎えます。
そして思いを伝える言葉の代わりに「君は綺麗だ」と思いながら「グッバイ」と伝えるという複雑な気持ちや切なさ。この曲には「好きだ」と思いを伝える言葉がなく、だからこそ深い愛情を感じるまさにエモさに溢れた曲であるといえます。
青春を思い出させてくれる曲として人気なのは、フジファブリックの「若者のすべて」です。
作詞作曲を手掛けた志村正彦の故郷、山梨の情景を描いた夏の終わりを感じさせる一曲。
どうしようもなく過ぎ去ってしまう時の流れや、大切な人との出会いと別れ、かけがえのない思い出が少しずつ色褪せる哀しみ。そのすべてが入り混じって生まれる複雑な感情がエモさを引き出しています。
映画
エモい映画で有名なのは、2016年に大ヒットを記録した新海誠監督の、「君の名は」です。
何気ない日常を過ごしていた平凡な男子高校生の瀧と、女子高生三葉の身体が何故か時々入れ替わってしまい、瀧と三葉はお互いに入れ替わった時の記録をつけながら生活を送っていたのですが、ある日突然入れ替わり現象が起こらなくなります。
三葉の様子が心配になった瀧は記録を頼りに三葉の暮らす町を訪ねてみるものの、その町はもう3年も前に隕石が落ちて消滅した町であることを知ります。そこで瀧はお互いの時間に3年のズレがあることを知り、それを利用して三葉を救おうとするという、とても不思議で美しい純愛ストーリー。
アニメが苦手な方でもきっと胸を打たれる、エモさが溢れる作品です。
写真
最近ではInstagramなどのSNS上で、フォトグラファーでもなんでもない素人がエモいと感じる瞬間をスマホのカメラで切り取ってアップできる時代です。実はそんな普通の人が撮った写真が、一番リアルに心に響くこともあります。
春に咲き誇る桜の花や、夏の海と空のコントラスト。秋には燃えるような紅葉、冬には一面の銀世界など季節ごとの美しい景色はもちろん、ノスタルジックな雰囲気あふれるレトロな街並み、何も遮られることのない空が夕焼けで赤く染まっている様子、など、エモい瞬間は生活のそこかしこに溢れています。
「#エモい写真」で検索をしてみると、数えきれないほどたくさんの写真が発見できます。その他にも「#夕焼け」「#青春」「#ノスタルジック」などで検索して、自分好みのエモい写真を探してみるのもおススメです。
「エモい」の意味を理解して、気持ちを表現してみよう
ここまで「エモい」という言葉についてお話してきましたが、「エモい」なんてただの若者言葉だと思って敬遠していた方も、少し身近に感じられたのではないでしょうか。
「エモい」は言葉にできない様々な感情を包み込んで表現する、沢山の意味を持つ言葉であるといえます。
何を「エモい」と感じるかは人それぞれで、この言葉はこの場面で使うもの!とはっきり決めないところがこの現代の多様性も表しているようですね。
「エモい」という言葉の意味を理解していたら、口に出しては言わなくともいつか「あ、今すごくエモい」と感じる瞬間に出会うこともあるかもしれませんよ。






