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2018/09/25 マッチングアプリ

マッチングアプリの魔力。銀行員の平和な日常が脅かされていく…?(mimi編後編)

 

マッチングアプリで起こる男女のあれこれを物語にしたシリーズ。
35歳既婚銀行マン。日々の生活には何一つ不自由していない。
しかし同僚からすすめられてマッチングアプリを始めると、平穏な日常が一転。
マッチングアプリの沼にはまっていくサラリーマンの姿とは…?

>>前回までのお話はこちら

 

ビールを飲み、タバコを深く吸い込むと、イライラも若干緩和されたようだった。

 

「私も飲んでいいかな?」

 

「もちろん。一緒に飲もう」

 

そうして私は柚子のグラスにビールを注いだ。

 

ビール

 

私の浮気話の最中に。

 

カフカは書かないよ

 

一息ついてから柚子は言った。

 

「雪山に流れる河に落ちた紅葉のような小道ちゃんは、どうしてそこまであなたの気をひくことになったと思う?」

 

それについては私自身、よく考えたことだった。

そこまで離れているわけではないにせよ、その年の差は恋人よりは親子に近い。

 

「多分僕が知らないことを彼女はたくさん知っていたからだと思う」

 

「例えば?」

 

「インスタグラムにアップするために、貪欲に自撮りの練習をしていること、とか」

 

「確かにあなたには知りようもないことね」

 

「小道はどの角度で自撮りすると自分が可愛く写るのか、エフェクトは何を使うのか、完璧に熟知していた。

実際にそれを見せてもらうと本当に驚いた。目の前にいる子が、突然プロのモデルになるんだ。

若い子は一瞬でモデルに変身できるんだ。

僕個人的にはカフカの『変身』と通じるものを感じたよ」

 

「カフカの変身?朝起きると虫になってたっていう本のこと?」

 

「そう。目覚めると虫になってるのも、自撮りでモデルになるのもたいして価値は変わらない。

カフカが今生きていたらインスタについて物語を書くんじゃないかな」

 

「書くかなあ」

柚子は真剣に考えているようだった。

 

考える

 

またバカげたことを言ってしまったと私は後悔した。

どうしてカフカの話なんてしたのだろう?

 

「カフカは書かないよ。絶対に。彼はそんな人じゃない。

って別に友達じゃないけど。これはただの冗談だよ」

 

一体私たち夫婦はどこに向かって歩いているのだろう。

 

夫の浮気が発覚した場合、世の理として道は2つしかない。

 

離婚するかしないか、だ。

 

なのに、どうして朝起きると虫になっている男の話をしているんだろう。

 

言うまでもなく、私が間抜けだからだ。

 

冗談以上の冗談

 

「昔からあなたの冗談は人を笑わせる以上の効果があるの、知ってた?」

 

「冗談は人を笑わせるためのものだよ。それ以上の効果があるなら、それは冗談ではすまない」

 

「そう。だから冗談ではすまないの。あなたの冗談は。昔も今も、きっとこれからも」

 

そう言って柚子はビールを一口飲んだ。

 

この時、なぜか真理惠がエイヒレを真剣に炙っている姿がフラッシュバックした。

 

柚子のビールの飲み方には、何かしらの自己表現が含まれていた。

 

 

柚子は離婚を望んでいるわけではない。

 

いろんな感情があるにせよ、それだけはなぜかしっかりと伝わった。

 

会話

 

「多分だけど、小道ちゃんはあなたのそういったところに魅力を感じた気がする」

 

「どういったところ?」

 

「そのmimiっていうアプリは可愛い子が多いんでしょ?」

 

「ルックスだけで言えば、ね」

 

「小道ちゃんはあなたの好みでもあった」

 

「…まあ、そうだね」

 

「常識的に考えれば可愛い子がマッチングアプリに登録するのは、目的がはっきりしてると思う」

 

「そうかもね」

 

「可愛いのに出会いを求めているわけだから、そこには目的がある。

たとえばお金、たとえば暇つぶし、たとえば冗談以上の冗談」

 

柚子の言いたいことは全く分からなかった。

 

「どういう意味?」

 

「他人の心に入り込める人って、やっぱり特殊な能力が必要なんだと思う。

あなたはそれを人並み以上に持っている」

 

「僕はただの普通の銀行員だよ。自撮りもできないし、虫にもなれない。

ただしお札を数えるスピードはカフカ以上の自信はある」

 

そういうところよ、とだけ言い、柚子はまたビールを飲んだ。

 

エスパー会社に就職するといい

 

小道とはいつも新宿アルタ前で待ち合わせをし、そのまま歌舞伎町に飲みに行った。

 

初めて会った時、小道は泣いた。

 

目鼻立ちが整い、雪のように肌が白い、物静かに喋る子だった。

美少女ではあるが、あまりにか細く、その印象は危ういものだった。

 

1時間ほどはたいして会話も弾まなかったが、酒(甘いリキュール)を数杯飲むと、徐々に小道は自分のことを語りだした。

 

周囲の友人は、なりたい職業を完全に把握して、それに就くべく努力を始めていた。

それは学生にとって最も大きい価値がある努力と言える。

 

一方小道には、ビジョンが全く見えず、したくてもその努力ができなかった。

 

周囲に取り残されていく孤独感と、何をしたらいいのか分からない焦燥感が入り混じり、小道は絶望の真っ只中にいた。

 

偉そうなことは言いたくなかったが、私は自分の学生時代や就職した時のことを振り返り、小道に話した。

とてもありきたりでつまらない話だったので、冗談を交えながら。

 

「学生が未来について悩むのは、ポテトチップスの味で悩むようなもんだと今は思うよ」

 

「ポテトチップス?」

 

「そう。塩味かコンソメ味か。君は何が好き?」

 

「バター」

 

「…そうきたか…。まあいい。いずれにせよ体に悪い。でもこの世からなくならない。それは必要だからだ」

 

「それと就職にどんな関係があるんですか?」

 

「バター味が好きな君でもたまにはコンソメ味が食べたくなる時があるだろ?」

 

「…あんまりないです」

 

「…話が進まないからここはあると答えるのが、大人の了見というものだよ」

 

「じゃああります」

 

「…ありがとう。つまり体に悪くても食べたくなるし、バター味が好きな君でもたまには何を買うか悩む」

 

「例えが分かりづらいかも…」

 

「今の君はポテトチップスで悩んでいるだけってことさ。

そしてコンソメを食べれば、バターにすればよかったと後悔する。逆もまたしかりだ」

 

「簡単に言えば、今慰めてくれてるってことですか?」

 

「君は人の心を読むエスパー会社に就職するといい」

 

それから憑き物が落ちたように、小道はよく話すようになった。

 

自撮り写真の方法も教えてくれた。私たちは二人ともよく笑い、よく話した。

 

あまりに繊細になっている小道とホテルに行くことは考えられなかった。

 

その日は新宿駅の東口改札で私たちは別れることにした。

 

新宿

 

 

最後の瞬間、小道は私の胸に飛びつき、突然泣き出した。

どうやら抱えている物が一気に溢れ出て、自分でもどうしたらいいか分からないようだった。

 

私はまた会うことを約束した。

 

そして2回目に会った時、私たちは歌舞伎町のホテルに行き、濃密で濃厚なセックスを2回した。

 

処刑台はまだはるか先にある

 

その後も定期的に会い、小道とはすでに5回ほど会っている。

 

たいして上手くもないポテトチップスの例えが小道の心を溶かすきっかけになったのなら、柚子の言うように冗談以上の効果があるのかもしれない。

 

もちろん自分では全くそんな効果を信用してはいないが。

 

「小道ちゃんとは今も続いてはいるの?」

 

「続いている、と思う」

 

「あなたに妻がいることを彼女は?」

 

「知ってる。全部正直に話してるから」

 

「続いてると思う、という曖昧な言い方の意味は?」

 

「こういう関係は、なんの前触れもなく終わる。

もしかしたら今、もう終わっているのかもしれない。

僕が知らないだけで。それに…」

 

この関係に未来はない、と言いかけてやめた。

 

「それに…?」

と柚子は言葉を促したが、私は黙っていた。

 

私はまだ柚子に話さなければいけないことがある。

 

私が陥っているドロ沼の底はまだ見えていない。

 

ここで死刑執行されればどれほど楽だろうと、私は思った。

 

でも処刑台はまだはるか先にあり、肌が焼かれるような灼熱の日差しの元、私は罪を背負いながらその道を歩き続けなければいけないのだ。

 

 

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