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    2018/09/25 マッチングアプリ

    マッチングアプリの魔力。銀行員の平和な日常が脅かされていく…?(mimi編前編)

     

    マッチングアプリで起こる男女のあれこれを物語にしたシリーズ。
    35歳既婚銀行マン。日々の生活には何一つ不自由していない。
    しかし同僚からすすめられてマッチングアプリを始めると、平穏な日常が一転。
    マッチングアプリの沼にはまっていくサラリーマンの姿とは…?

    >>前回までのお話はこちら

     

    「この三ヵ月であなたが体験したことを正確に教えてほしいの」

    と妻の柚子は言った。その言い方からは、なんの感情も読み取れなかった。

     

    私たちは、リビングのテーブルを向かい合わせに座っていた。

    テーブルには私のスマホだけがのせられていた。

    ストーリースマホ

    「今後のことはそれから話し合いましょう。あなたにも言い分はあるのだから、まずはそれを聞かせて」

     

    冷たいビールが飲みたいと思った。

    でももちろんそんなことは言えなかった。

     

    この状況でビールのことを考えてしまうほど、私の性根は腐り果ててしまったらしい。

     

    必要だったのはシンプルなケンカだったのかもしれない

     

    「誤解してほしくないんだけど、天田は何も悪くないから」

     

    「分かってる。彼は私たちのことを考えてマッチングアプリを薦めてくれたんでしょ?

    天田君に関しては私からも話さなきゃいけないことがある。でもそれは後にしましょう」

     

    私からも?柚子と天田の間に何かあったのだろうか?と一瞬考えたが、状況から考えれば当然だろう。

    私のことで柚子が天田に相談するのはいたって自然なことだ。

     

    二人

     

    柚子は今怒っているのだろうか。

    悲しんでいるのだろうか。

    私にはそれすらも分からない。

     

    もしかしたら私は今まで何一つ柚子のことを知らなかったのかもしれない。

    いや、きっと知らなかったのだろう。かつて天田が言ったように。

     

    だからこそ今こんな状況になっているのだ。

     

    私は何も展望しないように努め、ただ流転する日々に身を流していたにすぎない。

     

    私は大きく息を吸い込み、そしてゆっくりと吐いた。その呼気には自分で思っていた以上にどす黒い欲望が含まれていた。

     

    「始まりは3ヵ月前に会った2人の女性だった」

     

     

    柚子はじっと私の目を見つめがら、続きの言葉を待っている。柚子の目をこんなに感じたのはいつ以来だろうか?

     

    「1人は作家、1人はエステティシャンだった。

    2人とも20代半ばほどで、作家の彼女はとてもユニークな性格をしていた。

    エステティシャンは、職業どおりとても美しかった」

     

    柚子は何も言わない。

    何か言ってくれた方が楽だったが、私にわがままを言う権利はない。

     

    「僕は作家の彼女とセックスをした。でもこの時は、よく理解できていなかった。

    状況も自分自身のことも。完全に流されてたんだ。

    言い訳ではなく、事実として、そのセックスは僕に何ももたらさなかった」

     

    「あなたが言い訳するような人ではないことは知ってるつもりよ」

    と穏やかに柚子は言った。

     

    こんな時でも柚子を温かく感じる。私は10年以上もこの温かさにただ甘えていたのだ。

     

    「エステティシャンの彼女とはセックスはしなかった。でも彼女は大きく僕の心を取り乱した。

    厳密に言えば、これが始まりだったと思う。彼女は掛け値なしに美しかった。

    ギリシャの古代彫刻のように」

     

    「あなたに古代彫刻の美の知識があるなんて知らなかった」

    と笑いながら柚子は言った。

     

    「僕にそんなだいそれた美的センスはないよ。ただ造形的な美という意味で使っただけさ。

    君が野に咲くひまわりなら、彼女はプロの手で作られた生け花だった」

     

    「銀行員らしくない言い方ね。まるで作家みたい」

     

    「昔から無駄に本だけは読んでるからね。そんな彫刻のような、生け花のような彼女と食事をした僕は…」

     

    柚子がいつもどおりの反応をしてくれるので、つい普段と変わらない感覚で話していたことに私は気付いた。

     

    私は今罪の告白をしてる真っ最中なのだ。何が生け花だ。バカらしい。

     

    「いつもどおり話して。あなたの話し方、私とても好きだから」

     

    世の妻は、夫の浮気話を一体どのような様子で聞くのだろうか?

     

    少なくとも、この状況で夫の話し方が好きと言う妻はどこにもいないだろう。

     

    感情的になって罵倒された方がいい時もある。

     

    もしかしたら私たちの結婚生活に必要だったのはシンプルなケンカだったのかもしれない。

     

    地軸が0.1度ずれただけでも、あらゆる生命は一瞬で滅びる

     

    「僕はその時、彼女をまた誘うつもりでいた。また会いたいと思ったんだ。

    でも言えなかった。

    これは単純に勇気がなかっただけだ。断られて傷つくのを恐れただけ。

    残念だけど、君への罪悪感からじゃなかった」

     

    うん、とだけ柚子は言った。

     

    「こうして僕は、君以外の女性を求めていることを自分自身で知った。

    当時は単純に性欲のはけ口が欲しかっただけだと思っていた。

    雑に言えば、セックスすれば満足すると思っていたんだ」


    「でもそうじゃなかった」

     

    この時、一瞬だけ柚子の感情が垣間見えた。

    でもその正体まではやはり分からなかった。

     

    何を考えてるかわからない

     

    「その後僕はmimiというアプリを使うことにした。天田にも内緒で。

    mimiはとにかくルックスの相性をうりにしているアプリだったから、その時の僕にはちょうどいいと思えた。

    自分好みの子とセックスして終わり。君にはとても心苦しかったけど、僕自身早くこの負の螺旋階段から降りたかった。

    早く性欲を処理して、君との穏やかな元の生活に戻りたかった」

     

    「でもそうならなかった」

     

    「僕はmimiで小道(こみち)という女性と出会った。

    まだ20歳になったばかりの学生で、確かに美少女ではあったけど、はかなげで危うい印象の方が強かった。

    人生の選択を迫られながらも夢が見つからず、かなり悩んでいた」

     

    「彼女の美しさはどんな美しさだったの?」

     

    「雪山に流れる河に落ちた紅葉」

     

    「これはまた独特な表現ね」

     

    「小道は自分の名前が嫌いだと言っていた。

    小さい道にどんな意味を込めて我が娘に名付けたのかと、親のセンスをかなり批難していた」

     

    「可愛らしいと思うけど」

     

    「僕もそう言った。

    じゃあ『だいどう』や『おおみち』が良かったのかと尋ねると、彼女は笑っていた」

     

    まるで会社の女性社員について話しているような雰囲気だ。

     

    やはり私たち夫婦は、何かがずれている。

    すれ違い

     

    確か地軸が0.1度ずれただけでも、あらゆる生命は一瞬で滅びると何かに書いてあった。だからこそ地球は奇跡の惑星なのだと。

     

    浮気の話をしながら、地軸のことを考える私の脳もだいぶ奇跡的な作りをしている。

     

    そのおかげで離婚の危機をむかえているので、私の奇跡はどうやら残念な奇跡のようだ。

     

    お願いだから罰を与えてくれ

     

    「小道ちゃんとは何回会ったの?」

     

    「5回」

     

    「5回も会ったくらいだから話が合ったのね」

     

    「うん。といっても天田と話が合うのとはわけが違う。

    彼女は20歳で僕は35歳だ。どうしたって同等にはなれない」

     

    「でもあなたは年齢で人を区別するような人じゃない」

     

    ここまで話した時、私は少しいらついていることに自分で気付いた。

     

    冷静に話す自分へのいらだちか?

     

    浮気話を聞きながらも、受け止め「過ぎる」柚子へのいらだちか?

     

    自分でもその対象は分からなかったが、とにかくイライラしていた。

     

    「タバコ、吸っていいかな?」

     

    「もちろん。少し落ち着きましょうか。

    別にビール飲んでもかまわないから。あなたがイライラすることなんてないんだから」

     

    そこで私は気付いた。

     

    柚子がイライラしないことに私はイライラしているのだ。

     

    私は今柚子に口汚く罵って欲しいと心底思っている。

     

    どうしてこんな時まで柚子は優しいのだろう?

     

    こんなバカげた話を冷静に受け止める必要なんてない。感情を私にぶつけ、取り乱して責め立てればいい。

     

    なのに、どうして君はいつもそうなんだ?

     

    頼む。

     

    お願いだから罰を与えてくれ。

     

    ビール


    まるで死刑宣告を望む犯罪者のような気持ちで、私は冷蔵庫から缶ビールを取りだした。

     

     

    柚子との話し合いはどうなるのか…? そしてmimiで出会った女性とは?

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