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2018/09/24 マッチングアプリ

マッチングアプリの魔力。銀行員の平和な日常が脅かされていく…?(dine編後編)

 

マッチングアプリで起こる男女のあれこれを物語にしたシリーズ。
35歳既婚銀行マン。日々の生活には何一つ不自由していない。
しかし同僚からすすめられてマッチングアプリを始めると、平穏な日常が一転。
マッチングアプリの沼にはまっていくサラリーマンの姿とは…?

>>前回までのお話はこちら

 

きっと柚子は私の異変に気付いていたのだろう。

 

天田がどう言おうと私は、また柚子を裏切ることになったのだ。

 

エステティシャンの祥子と会うまでの1週間は、ろくに柚子の顔を見ることができなかった。

 

それでも柚子は何も言わなかった。私の体を心配しているだけだった。当然その優しさは、より深く私の背徳感をえぐり続けた。

 

シャツは概ねユニクロで買う

 

恵比寿駅で待ち合わせした私たちは、早速祥子が行きたいと言っていた(アプリの中で)店に向かった。

 

恵比寿

 

どうやら若い女性の中では話題になっているイタリアンのようだった。

1人あたりの予算は最低1万円。

当然私が出すので、今夜は最低でも2万円を使うことになる。

 

天田と4回は飲みに行ける金額だ。

 

「私ずっとここに来たかったんですよ!

うちの店に来るお客さんが美味しいって言ってて!

でもさすがにちょっと高くて…今夜はありがとうございます!」

 

祥子はエステティシャンらしく、美の追求に貪欲な女性だった。

細身で、スタイルがよく、質の良い化粧品と高価な香水を使用しているのが一目で分かる。

 

 

エステティシャン

 

 

シャツは概ね「ユニクロ」で買う私が、こういったタイプの女性と出会うことは当然皆無だった。

 

軽い自己紹介を終え、一息ついた私たちは沈黙のまま前菜にフォークをつけた。

 

一体何を話したらいんだろう?

しがない銀行員と美人エステティシャンにどんな接点があるというのか?

 

ふと壁を見ると、誰が描いたのか分からない抽象画が飾られてあった。

 

抽象画というだけで、素人にはその絵に芸術的価値があると思えてしまうから不思議だ。

 

抽象画の芸術的価値も、エステティシャンの美的施術も、私には理解不能な領域だ。

 

そういやこないだ天田と行った新橋のガードレール下の居酒屋にはお笑い芸人のサインが飾ってあったな。あれは誰のサインだったのだろう?

 

リアリズム溢れる美女と野獣

 

「退屈ですか?」と祥子は言った。

まったく脈絡のないことを考えているのを見透かされたのだ。

 

「あ、いえ…しがない銀行員はあまりこういった場所に来ることもなく…少し戸惑っています」

 

「私もです。仕事上相手はリッチな女性ばかりですから、話はよく聞くのですが、あまり自分には縁がなくて…」

 

と話す祥子の雰囲気は、高級イタリアンにぴったりだった。

縁がないようには思えない。

 

「祥子さんの今日の雰囲気は、店にぴったりですよ。僕なんて腰が引けて…今すぐTシャツと短パンに着替えたいくらいです」

 

サーモンのマリネをフォークでさしながら私は言った。

 

「それができたら楽ですね!今日は、私が持ってるファッションの全てをかき集めてきたんですよ!

こう見えてもエステティシャンなので一応外では綺麗に見えるよう心がけています」

 

シャープで品のある雰囲気のせいで、やや冷やかさも感じていたが、祥子は案外屈託ない性格なのかもしれない。

 

「かき集めてそこまでの美人になれるのは、そもそもが美しいからですね。

僕なんて、これ『洋服の青山』で買ったスーツですよ?

こんな時のためにも人生で1度くらいはアルマーニのスーツを買わなければいけないんでしょうね」

 

祥子は言った。

 

「正直銀行員の方ってお堅い人ばかりなのかと思ってました。冗談が巧いんですね」

 

そして屈託ない笑顔を見せた。

 

もしこの様子をあの名もなき抽象画家が描いたら手法をがらりと変え、リアリズム溢れる「美女と野獣」を描いてくれるに違いない。

 

その後次々とコース料理が運ばれてきて、私たちはごく自然な雰囲気で会話を楽しんだ。

少しずつ、私と祥子の顔はワインによって赤らみ始めていた。

 

イタリアン

 

「エステティシャンって、従業員もお客さんも女性しかいないので、本当に出会いがないんですよ」

 

男には困ってなさそうに見える祥子は言った。

 

「けっこうマッチングアプリに登録している子が多いんです。

職業柄、凛としたイメージだと思いますが、実はかなりの肉食なんです。

怖いですよエステティシャンの裏は」

 

「凛としながらも肉食…鶴の着ぐるみを着たライオンみたいですね」

 

「ライオンが鶴の着ぐるみ!?例えが面白いですね!実際その通りです!

私たちはみんな猛獣なんですよお。銀行員の方はどうなんですかあ?」

 

どうやら程よくワインが効いているようだ。甘えるような言い方で少し語尾が間延びしている。

 

「どうなんでしょう…普通のサラリーマンですから、しょぼくれた居酒屋で上司の愚痴を言ってばかりです」

 

と言いながら天田はほとんど上司の愚痴をこぼしたことがないことに気付いた。

 

「大変なお仕事ですもんねえ。女性関係はどうですか?出会いってありますか?」

 

「ありますよ。たくさん出会います。投資の相談に来るおばあちゃんとか」

 

「それは素敵な出会いですね!羨ましい!」

 

祥子はかなりのご機嫌な様子だった。

徐々に柔らかくなっていくその雰囲気は、彼女の魅力を存分に引き出していた。

 

私の胸の内がざわついていた。

何か得体の知れないものがうごめき、胸の外に出ようともがいているようだった。

 

その得体の知れないものが、何なのか分からなかったが、少なくとも柚子を前にしている時はおとなしくしているらしい。

 

決定的な言葉を言わなければいけない

 

出会った時に困っていたとは思えないほど私たちの会話は弾んだ。

きっと祥子も楽しんでくれていただろう。

 

当然私も楽しかった。

 

柚子の存在を忘れるほどに楽しかった。忘れているということすらも忘れていた。

 

あっという間に夜は更け、私たちはデザートを口にしていた。それはこの楽しい時間が終わることを意味していた。

 

私は決定的な言葉を言わなければいけないと思った。

今、このデザートを食べている最中に。

でもその決定的な言葉は、口の中でまだ言語として成立せずにいた。

 

私はパニックに陥りながらデザートを食べていた。レモンのシャーベットのようだったが、無味無臭の冷たい氷にしか感じられなかった。

 

「今夜はとても楽しかったです!ごちそうさまでした!あこがれのお店で食事できたので、友達にも自慢できます!」

 

「いえ。こちらこそ。どうもありがとうございました」

 

今しかない。これがラストチャンスだ。決定的な言葉を逃げずに探すんだ。そして掴んで祥子に投げろ。

 

ウェイターが伝票を持ってきたので、私はクレジットカードで支払いを済ませた。値段は2万5千円ほどだったが、そんな金額は気にもならなかった。

 

支払いを済ませたのでとりあえずは店に出て、私は祥子に言葉をぶつけようと思った。

 

するとたまたま目の前に路上にタクシーが止まっていた。祥子はラッキーといわんばかりにすぐにそのタクシーに声をかけ、中に入り込んだ。

 

タクシーに乗り込む

 

「本当に今日はどうもありがとうございました!ごちそうさまでした!

お仕事がんばってくださいね!」

 

そうして祥子を乗せたタクシーは、あっという間に走り去っていった。

 

こうして私はチャレンジすることもなく、再会のチャンスを逃した。

 

私が探していた決定的な言葉とは「また会いたい」という、たったそれだけの言葉だった。

 

私は祥子とまた会いたいと思っていたのだ。

 

あれほど柚子への裏切り行為を責めていたはずなのに、私は祥子を求めていたのだ。あわよくば、今夜セックスしたいと思うほどに。

 

私は天田に謝らなければいけない。

 

もう1度柚子と向き合わなければいけない。

 

胸の内では、まだ「得体の知れない何か」がうごめいていた。「それ」は私に明らかに怒りを向けながら、胸の壁に激しく体をぶつけていた。

 

「ここから出せ」といわんばかりに。

 

それでもマッチングアプリを続ける主人公。この後の展開とは…?

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